カワセミ (ブッポウソウ目カワセミ科) 全長17cm 留鳥
昨年夏、ひょうたん池でカルガモを観察していて、我が目を疑いました。「チィーッ」と甲高い声と共に水面すれすれを勢いよく飛んでいく青い影。思わず、「どうしてこんな所にいるの?!」と叫びそうになりました。双眼鏡で見てみると、大きな黒い嘴と、エメラルドグリーンの翼、オレンジ色のお腹。この鳥こそが、かつては「清流の宝石」と呼ばれバードウォッチャーの憧れの的だったカワセミです。1960年代以降、生息域の縮小・個体数の減少が著しく、一時は幻の鳥となっていましたが、最近では都会に進出し、都心のかなり汚い水辺でも観察できるようになっています。とはいえ、ひょうたん池のような小さな池で、しかも完全閉鎖水域でこんな鳥が見られるとは思ってもみませんでした。
カワセミの体型の特徴は、なんと言ってもその大きな頭と大きく太い嘴です。これは、頭から水にダイブして魚などを捕らえるのに適しています。雄では下嘴が黒く、雌では口紅をぬったように赤くなっています。ひょうたん池に現れたカワセミは、下嘴が黒く雄のようでした。腹部のオレンジ色がくすんでいたため、まだ若い個体だと思います。なわばりを求めて飛び回るうちに、この池を見つけたのでしょうか。おそらく近くの多摩川や野川あたりで育った個体でしょうが、若鳥がどのようにして分布を広げるかを知るためのよいサンプルケースとなるかもしれません。
ひょうたん池の周囲は巣穴を掘るのに適した場所があるため、うまくいけば学内で繁殖してくれるかも……、と思っていましたが、1ヶ月ほど断続的に観察できた後は確認できていません。なわばりとして狭いためか、つがいの相手が見つからなかったためかはわかりませんが、今後もまた来てくれることを楽しみにしています。
2008年の記事はこちら
言語社会研究科修士1年 中野晶子