4月寄付講座「緑の科学」 / 西村周一(昭42年経)
寄付講義『緑の科学』初回(4月10日、4時限)
今年度よりオリエンテーションが省かれ初回から講義が始まりました。
筒井教授から最初に本講義の狙い、4人の講師によるオムニバス風の構成と7月17日のテスト迄の講義の進め方に付いて説明された後、最初に担当される福嶋講師(東京農工大名誉教授)を紹介され第1回講義-サクラ観察-が始まりました。
バラ科に属するサクラは、日本には9種の野生の種が分布しており、それらを基にした園芸品種は700種にも及びます。 国立キャンパスでは最もポピュラーなソメイヨシノに始まり、オオシマザクラ、ヤマザクラ、カスミザクラ、ウワミズザクラ、イヌザクラ、ヨウコウ、オカメに八重桜のフゲンゾウ、イチヨウ、カンザン等多品種のサクラが見られる絶好のサクラ観察スポットであり、この日のテーマは季節の「サクラ」を観察しようというものでした。 例年ですと時期的に大方のサクラは散ってしまいヤエザクラしか観られないのですが、花冷えが長く続いた今年はソメイヨシノも未だ満開に近い状態を維持している一方でヤエザクラも咲き始め、今年の受講生は非常に恵まれていました。
95人の受講生を8班のグループに分け、福嶋講師、筒井教授に加え応援に駆け付けた植樹会役員12人で分担して西キャンパス内をガイドし、約1時間、各種サクラを観察して廻りました。
サクラはソメイヨシノしか知らなかった学生諸君もツアーを終える頃にはヤマザクラ、オオシマザクラの特徴も掴み、何よりも国立キャンパスが立派なサクラ資源に満ちていることに強い印象を受けたようでした。
以上
寄付講義『緑の科学』第2回(4月17日、4時限)
福嶋講師がプロジェクターを使って、約13万年前の古東京湾の広がりから約2万年前の関東地方の地形に付いて示され、武蔵野の地形、国分寺崖線と湧水に付いて説明が進んだ後に、「武蔵野と一橋大学キャンパスの緑と自然」にと移りました。
現在の国立キャンパスが武蔵野の雑木林を切り拓き、桑畑の整地から始まった件を説明する過程では、大正12年に発生した関東大震災の被害に触れ、箱根土地の堤康次郎が計画した大学を中心とした大規模な都市建設構想に乗り佐野善作学長(当時)が決断され一橋大学が国立に移って来たこと、国立の街づくりではドイツの大学都市ゲッチンゲンを参考にして出来上がった歴史も学生諸君の興味を惹いたと思われます。
座学の後は約1時間、講義棟を出てのフィ―ルド・ワークです。
10人前後の小グループに分けられた学生達は筒井教授の製作された光量・温度計を手渡されて、西キャンパス内に予め決められた4か所に赴き、各ゾーンでの光量と気温の測定を行いました。 陽当りの良い場所、鬱蒼とした林の中、林の中でも陽の差し込む処と全く陽の当たらぬ場所では当然、光量も変わって来ます。 学生にはその差異を計量することで実感してもらうと同時に、光環境が植物の生育に決定的な影響を及ぼすことを感じ取って貰うのが狙いです。
この測定は時期を変えて3回にわたり行い、季節の変化による差異も実感してもらいます。
所定の計測を終えて戻る学生がこの意図を理解してくれているかどうか、これからが楽しみです。
以上