コジュケイ
コジュケイ (キジ目キジ科) 全長27㎝ 留鳥
声はすれども姿は見えず。一橋大学に入学するまで、コジュケイはそんな鳥の代表だと思っていました。「チョットコイ、チョットコイ」と聞きなされる大声はかなり離れた場所でも聞こえますが、やぶの中で生活するため、そのずんぐりとした姿をフィールドで観察する機会は少ないのです。わりと長くバードウォチングをしていますが、実はそれほどじっくりとコジュケイを見たことはありませんでした。
ところが。ある日、1限目に西キャンパスの講義棟で授業があったときのことです。本館と別館の間の道を右折しようとして足を止めました。道端に大きな鳥が2羽、最初キジバトかと思ったのですが、どうも膨れすぎています。よくよく見るとコジュケイでした。逃げないので1メートルくらいまで接近してみましたが「なんだ、悪いかよ、邪魔するなよ」とでも言いたげな視線をちらりと投げかけるだけでした。なぜか大学内のコジュケイは人馴れしているのか、驚くほど警戒心が薄いようです。がさがさと音をたてて草むらで餌取りしているのを眺めていても、一向に気にする様子はありません。ひどい場合は自転車が傍を通るのに、舗装した道をのんびり横切っていることもあります。犬などの入ってこない環境で特殊化してしまっているのかもしれません。そのうち人に蹴っ飛ばされたり、自転車にぶつかられたりするのではないかと心配しています。
もともとは中国原産で、狩猟鳥として放されたものが野生化して増えたのだそうです。1919年に東京都や神奈川県で放鳥されたそうですが、大学内のコジュケイもそのときの子孫かもしれません。彼らの健在ぶりは、運がよければ講義棟や情報教育棟の室内にいてもその大声でわかります。授業中でもつい鳥の声に反応してしまうのはバードウォッチャーの悲しい性です。
法学部3年 中野晶子