ホオジロ
ホオジロ(スズメ目ホオジロ科)全長16.5㎝ 留鳥
「一筆啓上仕り候」これはホオジロのさえずりの聞きなしですが、文語体でさえずるとはなかなか教養のある鳥です。全国で普通に見られる鳥ですが、地域によってさえずりにヴァリエーションがあり、主に関西方面では「源平ツツジ、白ツツジ」と聞きなされているそうです。こちらも季節感のあるおもしろい聞きなしです。他にも様々な聞きなしがあり、広く人々に親しまれてきた鳥であることがわかります。繁殖期に雄は木の梢や電線など目立つところで「チョッピーチチロ」などと胸をそらせた姿勢でさえずります。初夏を感じさせる明るく澄んだ声です。
やぶや低木が混じる明るい開けた林のへりで生活するので、一橋大学内では兼松講堂の西の庭園内、第一講義棟南側、磯野研究館付近など、あちこちでさえずりを楽しめます。風で揺れる木のいただきにつかまっていつまでも鳴いているホオジロのほうは必死の様子ですが、若葉をめでつつ、シャワーのように降ってくる声を浴びながらの散歩は心地よいものです。春夏には華やかにさえずるホオジロも、繁殖期後半にはひっそりと沈黙し目立たない鳥になります。秋には、その年生まれの若い雄に対して縄張りの先取り宣言のために再度さえずることがありますが、冬になると草の実を探しながら地面近くで「チチッ、チチッ」とつぶやくだけです。
「頬白」といっても頬線が白いだけで、いわゆる頬の部分は黒なので、丸く白い頬をしたシジュウカラのほうがこの名にふさわしいような気もします。ヤマスズメ、ノスズメ、ヤブスズメと呼ぶ地方もあり、これらの名前のほうが誤解の少ない名前かもしれません。また、バードウォッチャーにとっては不思議なのですが秋の季題になっています。千葉県の県鳥でもあります。
法学部3年 中野晶子