「一橋で雪かきしましょう!」社会学部三年 中村常葉

冬が終わり、春がやってきた今日この頃(執筆時点)です。春がくるたびにやっぱり春は素晴らしいと思います。4月の桜も5月の緑の葉っぱも好きです。自分の名前に「葉」の字が入っているので、特に5月は特別な気分になります。今から楽しみです。
春についてしゃべって参りましたが、今からするのは「冬」の話です。私は新潟県の妙高市という豪雪地帯で育ちました。上京してからは、「新潟!?いいな~、雪が素敵でしょう」「スキーし放題じゃん!上手いの?」などと、地元の冬についてポジティブな言葉をもらうことが多いです。今回は、故郷の冬について短いながら書かせていただきたいと思っています。

私は「冬」という季節が大変苦手です。豪雪地帯の冬ははっきり言って地獄絵図です。まず、歩くという行為が非常に困難です。除雪車は基本的に車のことしか考えていないので、歩道には除雪車がのけた道路の雪が詰まれています。そこをかき分けて目的地に向かうわけですが、当然とても疲れます。プールの中で歩いて前に進もうとするあのかんじを思い出してください。永久にあれです。さらに決定的に気持ちが萎えるのは、雪が長靴の中に入ったときです。皆さんも経験があると思いますが、寒い中で足元が濡れた状態で歩くのは大変つらいです。さらに、豪雪地帯は冬の湿度が高いため、ほっといて乾くということがまずありません。地獄です。余談ですが、豪雪地帯ではブーツより長靴が人気を誇っています。雪が外側からしみこむということがないからです。私がいたころは「おしゃれ長靴」なるものが女子高生の間で流行っていました。長靴のくせにかわいいので皆さんもどうぞ使ってください。
このほかにも、電車がとまったり(センター試験三日前にとまり登校を果たせず)、雪当番(流雪溝を流れる雪をつついて崩す係。早朝。苦行。)の押しつけあいで近所同士がもめたりと、いろいろ困難があるのですが、一番きついのはめったに太陽がおがめないことです。豪雪地の冬はとにかく晴れません。雪か曇りがデフォルトなので、常に空がどんよりとしています。皆さん経験があるかと思いますが、天気がどんよりすると気分も一緒にどんよりしてきます。最近の調べでは、うつ病の発症率は年間日照時間の少ない地域ほど高く、豪雪地帯の冬のうつ病発症率は非常に高いようです。長野出身の私の母も、冬場は「あーーーーー日光あびてーーーーー!こんなとこに嫁にくるんじゃなかった!」というような内容の発言を繰り返しておられます。

ここまで、冬のネガキャンを繰り返してきましたが、豪雪地帯ならではの楽しいこともあります。それは雪かきです。これは平日の朝にやると苦行でしたが、休日の時間のあるときにやるとなかなかよいものでした。豪雪地帯では「スノーダンプ」なる、てこの原理(?)を最大限に利用した雪かき道具があるので、スコップでかくときよりも疲れにくく、ただ黙々と単純作業をしている感覚です。単純作業が好きな方は楽しいと思います。さらに、雪かきは場を選べば雰囲気が格別です。たくさん雪の降った後に、周囲に人がいない開けた空間で行うと本当に無になれます。雪というのは、日常では一粒一粒に中指を立てたくなりますが、余裕のあるときにはきれいなのも事実です。真っ白な空間の中で淡々と心を動かしていると、変な宗教みたいなことをいいますが心が浄化されます。お寺で写経しているのと似た感覚かもしれません。地元にいるときは、「わたし今エルサみたーい」などと馬鹿なことを考えてほくそ笑みながら、雪をかいておりました。基本的に地元は嫌いですが、雪かきにだけは雪国の醍醐味というものがあると思っています。

以前に「雪と一橋」というタイトルの寄稿文があったようですが、雪が降ったあとの一橋キャンパスは本当に美しいと思います。そこで提案なのですが、冬に植樹会の定例作業で雪かきをするというのはどうでしょうか。大勢で話しながら和気あいあいとやると楽しいでしょうし、良い運動にもなります。植樹会のよさの一つには「自然に触れる機会がもてる」こともあると思うので、たまには植物以外の自然に触れるのも面白いのではないでしょうか。
植樹会主催雪かき、どうでしょうか。いつか、ドカ雪が降った年に実現することを願っています。幹事の皆様、どうか前向きに検討してください。