「自然を味わう」植樹会学生理事 社会学部4年 高野瑞生

季節柄か、父親が世話している家庭菜園でとれるハーブ類が、我が家の食卓に並ぶ機会が増えてきました。トマトソースのパスタにイタリアンパセリを添えたり、ジェノベーゼソースにバジルを使ったり、生春巻きでパクチーを一緒に巻いたりと、色々な料理で活用されているのを、味わわせてもらっています。私自身はその方面には興味も才能もなく、休日に父親が庭に出てせっせと手入れしているのを窓越しにぼうっと見ていただけなのですが、食卓に彩を加える植物たちを見ていると、なんにも関わっていないのに「身近に自然があるっていいなあ」などと考えたりするようになりました。
さて、植樹会の作業に参加していると、いつもより多く自然の空気に触れていることを実感します。普段は入らないようなキャンパスの奥の森の中に行くと、土のむわっとした匂いや、地面に投影されているまだらな木漏れ日や、落ち葉をたくさんの人が踏む音など、自然が感覚を刺激してくるのが伝わってきます。普段家の中や大学の教室の中でじっとしていることが多い私は、勝手ながらこの定例作業をひと月に一度の気分転換とさせていただいて、作業で汗を流すほかにも、自然の中を散策し、自然のパワーを吸収しております。
都会の真中で暮らしていれば、自然に触れることはおろか、自然を見ることもなかなかないでしょう。東京都にありながら豊かな緑に恵まれたこの大学のキャンパスで、草木の手入れを通じて自然を感じることができるというのは、なんだか実はとても貴重な体験なのではないかと感じるようになりました。緑に包まれたキャンパスの中で四季を感じながら勉学に励み、月に一度思いっきり自然を楽しむ、なんていうのはかなりのぜいたくで、この先体験しようと思ってもなかなかできない体験なのであろうなと考えるようになりました。このような場に毎回居合わせることができるようになったことを、ちょっとした幸福と感じております。
私自身は今年度を以て一橋大学を卒業してしまい、この環境から離脱せざるを得ないので、せめて自分の身近にある自然だけでも大事にしたいという気持ち大きくなってきました。実家暮らしの間は父親の家庭菜園の手伝いでもしていけたらなあという心持ちだけは一人前にありますが、未だに食べることでしかその良さを実感できていないのがもったいない限りです。

<学生手作りの「くにたちのお花ばたけ」での作業>