「植樹会との幸運な出会い」米川 容子
「人間は一生のうちに3つのことを成し遂げれば幸せな人生だ」とある人が言う。その3つとは1.結婚をすること(子孫を残すこと)2.木を植えること(財産を残すこと)3.本を書くこと(自分を残すこと)だと言う。
歴史の大切さが感じられる年齢になった今、ふりかえってみると、やり残していることが沢山ある。
その1つが木を植えること。家族に恵まれ、住居を構えることができたが、植樹の経験は一度もない。
そんな折、米川ゼミの古久保様から、キャンパスに主人の13回忌の記念植樹をして下さるお話をいただいた。2つ目の目的を果たす木を植えることができることは、私にとって望外の幸せである。皆様のお力添えをいただき、早速一橋植樹会にも入会させていただいた。最初の作業の日は、新生植樹会になって通算100回目の月例作業日。その11月18日は、亡き主人、米川伸一の13回目の祥月命日にあたる。53年の卒業生18名と共に「ヤエザクラ関山」を兼松講堂の脇に植樹、皆様のお優しいお心遣いとご好意に、感謝の尽くせない思いである。
主人がこよなく愛した一橋大学には、生きるエネルギーを与えてくれるキャンパスがある。樹齢何百年も経っている樹木がいつも温かく迎え入れ、心身の癒し効果を高めてくれる。植樹して下さった昔の人々の思いが、今の私との間に共鳴し、その素晴らしさと思いやりが実感できる。
キャンパスの見上げるばかりの大きな木も、一粒の小さな種が芽生え、緑の葉を広げ、根を大地に張り、何年もかかって成長してきたものである。それぞれ決まった生育場所があり、どれも生きるために大切な働きをしている。一橋の美しい校舎も、自然と共生することの過酷さ、素晴らしさ、四季折々の移ろいを見つめ、転変する環境を力強く生き抜いている。これはひとえに一橋植樹会の活動のお陰であると、作業を通して、しみじみ思う。地球上の全ての生物の栄養は植物が作り出している。その植物が、一橋大学のより良い環境の中で、美しく豊かに生きられるよう、微力ながらもお役に立ちたいと思う。今後とも植樹会の諸先輩の皆様方に、ご指導いただきながら、一橋大学の発展のために力を注いでいきたいと思う。