秋空に映える兼松講堂と図書館。キャンパスの風景は秋の深まりとともに、奥行きを増していきます。大気の爽やかなキャンパスを歩けば、季節の移ろいを感じます。
陸上競技場南側にある第一ススキ野ゾーンではススキが開花時期を迎えていました。ススキは秋の七草の一つで、なかなか風情があります。毎年9月の作業日には、ここで「見の宴」が行われます。
かつて武蔵野にも草原があり、秋の七草が身近に見られました。宅地化が進み、草原は姿を消し、フジバカマの野生種は絶滅危惧種となりました。フジバカマもススキとともには陸上競技場南の草原ゾーンに植栽され毎年花を咲かせます。
ススキ野ゾーンには、もちろん萩も咲きます。西洋人が好むような華やかさはありません。ところが日本人は古来、萩に深い思い入れがあります。
百花繚乱。キャンパスではたくさんの草花が咲き競います。あまり知られていない、しかもよく見ると美しい草花もあります。カラスノゴマ(シナノキ科カラスノゴマ属)は岸田ロードの道端に咲きます。妙な名はその種子をカラスが食べるゴマにたとえたといいます。
イヌゴマ(シソ科イヌゴマ属)もよく見ると美しい花です。茎の先に淡紅色の唇形花を数段輪生させます。キャンパスの草原で、こうした目立たないが美しい花を見つけるとうれしくなります。
11月、一橋祭のころ、大気はますます透明感を増し、秋空が高くなっていきます。紅葉にはまだまだですが、大気の爽やかなキャンパスを歩けば、季節の移ろいを感じます。
そして中旬、まずはイチョウの葉が黄色を帯びてきます。黄葉したイチョウは大学の建物とよくマッチングします。秋空の下、輝くようなキャンパスの秋を演出します。
そして下旬、錦秋が出現します。燃えるような紅色と明るい黄色、それに本来の葉の色である緑色が相まって錦繍にキャンパスは彩られます。
キャンパスの紅葉は鮮やかさを増していきます。本館と丸便を繋ぐ通路横のイロハモミジの紅葉はキャンパスにあって圧巻です。周囲の環境にも合い、思わず足が止まります。私にとって学生時代に刻印された懐かしさがあります。
12月中旬にイチョウは葉を落としていきます。キャンパスは次第に落ち着きを取り戻したような雰囲気が漂います。それでもドウダンツツジの紅葉は12月末まで続きます。キャンパスにも木枯らしが吹きます。
錦繍の競演の残影でしょうか、キャンパスは落ち葉に覆われます。そして冬を迎えます。
佐藤征男(記)