ヒバリ (スズメ目ヒバリ科) 全長17cm 留鳥
声によって春を告げる鳥といえば、やはりウグイスとヒバリが挙げられるでしょう。小学生の頃数年間住んでいたところは、畑に囲まれていて、春になると毎年ヒバリの声がにぎやかでした。「ピロピロピー、ビュルビュル」と一心不乱に鳴きながら空を目指し、小さくなって見えなくなったかと思うと、まるで落ちるかのように急降下してくる姿を、飽きずに眺めていたものです。繁殖期に朗らかに鳴いているときは識別しやすいヒバリですが、冬場などに黙っているのに出会うと、一瞬、何の鳥だったかな、と思ってしまうほど地味な色をした鳥です。
ヒバリが何故あれほど必死になって天を目指すのか、昔からいろいろな人が不思議に思っていたようです。中勘助の『鳥の物語』の中の「ひばりの話」は、無実の罪を着せられた中将姫を救うため、ひばりたちが天の「あみださま」にお願いするという、心温まる話です。しかし私が密かに気に入っているのは、ひばりの金貸しの話です。お天道様に貸したお金を返してもらえない金貸しのひばりが、「日一分、日一分、利取る、利取る、月二朱、月二朱」と借金督促をしている、という民話です。ヒバリの一生懸命さの理由がよくわかります。
ヒバリの複雑なさえずりに魅せられた愛好家は、多摩川のヒバリが最も声が良いと言うそうです。確かに鳥のさえずりには地域差があるようなのですが、私にはどこのヒバリもよく似たさえずりをしているように聞こえてしまいます。大学内では数は少ないようで、なかなか観察できませんが、春先に陸上競技場の南側でさえずっているのを耳にします。多摩川からは少し離れていますが、本場仕込み(?)の華やかな美声を聞きに、春先の大学内の散歩を楽しんでみてはいかがでしょうか。
言語社会研究科修士1年 中野晶子