ムクドリ (スズメ目ムクドリ科) 全長24 cm 留鳥
宮沢賢治の『鳥をとるやなぎ』という作品があります。この中で「もずが、千疋ばかりも飛びたって」という記述があり、以前から気になっていました。ご存知の通り、モズは群れることはありません。宮沢賢治の作品にはヨタカ・フクロウ・カワセミなど多くの鳥が登場しますが、鳥への造詣の深さを感じさせるものばかりで、この話だけが腑に落ちなかったのです。ところが最近、この「もず」は「ムクドリ」であるという説を知りました。当時の秋田地方では「ムクドリ」を「モズ」と呼んでいたらしいのです。調べてみると、今でも東北地方には「もく」「もぐ」などと呼んでいるところがあるようで、ムクドリならば千羽を超える大群を作ることからも、この説に納得しました。
昨年の6月ごろのある日、西キャンパスの生協に行こうとしてふと違和感を覚えました。生協の裏側がなんだか騒がしいのです。不思議に思って行ってみると、ひょうたん池と生協のあいだにあるケヤキを中心に1000羽以上ものムクドリが群れて「キュルキュル、リャーリャー」と大騒ぎをしていたのです。1羽1羽よく見ると、褐色の幼鳥がかなり混じっており、繁殖が終わって群れをつくっていたのだろうとわかりました。大学内にも「鳥をとるやなぎ」ならぬ「鳥をとるけやき」があったのです。ただ、そのような大群に遭遇したのは一度きりで、今年もまだ見ることができていません。
ムクドリは、地上にいるときは嘴と足のオレンジ色が目立ち、先のとがった翼を広げて飛んでいるときは「空飛ぶ三角形」といった様子で、わかりやすい鳥です。声も姿も決して美しいとはいえない鳥ですが、幼鳥を交えて家族で水浴びをしている姿などを見ると、なんとなくなごませられる鳥でもあります。
法学部4年 中野晶子