ツグミ

ツグミ (スズメ目ヒタキ科) 全長24㎝ 冬鳥

ツグミ
ツグミ
観察ポイント:野球場・陸上競技場
観察ポイント:野球場・陸上競技場

秋も深まる頃シベリアからやって来るツグミ。「冬の使者」「北帰行」など、ことあるごとに話題になるのはオオハクチョウですが、私にとって「冬の鳥」といえばなんと言ってもツグミです。とんとん、と数歩跳ね歩いては胸を反らせて立ち止まる独特のポーズ、きりりとした顔立ちには、どこか寡黙な冬の賢者といった印象を受けます。そんなツグミは秋の季題にもなっていますが、歳時記を見て驚きました。例句の大半が「つぐみ焼き」なのです。どうやら花鳥風月としてよりも秋の味覚としてのイメージが強いようです。現在では禁止されていますが、以前はかすみ網猟で相当な数が犠牲になったと聞きます。昨年は鳥インフルエンザの感染拡大を媒介した張本人ではないかと疑われたり、ツグミはなにかと冷遇されがちなようです。フランス語で‘vilain merle’(醜いツグミ)というと「いやな奴」の意味の成句だそうです。もっとも、フランスには日本のツグミはいませんので、この‘merle’はツグミの仲間のクロウタドリかなにかだと思います。

ツグミの学名はTurdus naumanniといいます。インターネットを検索する際に面倒だったのでnaumanniだけ入力したところ、検索結果の半分ほどがナウマンゾウについてでした。ナウマンゾウの名の由来になったナウマン博士は明治時代に日本に招聘された地質学者です。この博士がツグミにも関わったのかと思いましたが、地質学者Heinrich Edmund Naumann、鳥類学者Johan Fredrich Naumannで、別人でした。

大学内では、ひとのいないときの野球場や陸上競技場でよく見かけます。一羽でいることが多く、ときおり「クイックイッ」と鳴きます。渡去前には「キョロキョロ」などとさえずることもあります。5月上旬頃まで日本で過ごし、その後はシベリアへと帰っていきます。渡来したばかりの頃のツグミの平均体重は50~55gほどで、渡去寸前には95~110gまで重くなっているそうです。厳しい旅に備えてのことなのでしょう。

法学部3年 中野晶子