「閑話休題-クローバーへの想い-」一橋大学大学院商学研究科生物学教室 教授 筒井泉雄
シロツメクサを貴方に
植樹会の草刈りをくぐり抜け、夏に向かってけなげに白い花をつけているクローバーが、そこ彼処。
草刈りの折いつも刈るのを気にかけていたクローバーは如何と紐解けば、
和名:シロツメクサ(白詰草):学名:Trifolium repens L.
英名:White Clover(ホワイト・クローバー):別名:クローバー、シロクローバ
クローバー(Clover)は、マメ科シャジクソウ属(トリフォリウム属、Trifolium)の多年草の総称にて、日本ではシロツメクサ(白詰草)と呼ばれ候。明治時代以降、飼料用(馬肥(うまごやし)として導入されしものが野生化せしもの、かたや、日本に渡来したは江戸時代、花を乾燥してガラス器などの緩衝剤として詰め物にせしものから発芽したもの哉。という2説在り。詰草の名前は弘化3年(1846年)にオランダから献上されたガラス製品の緩衝材として詰められていたことに由来する云々(Wiki、etc)。
一橋キャンパスでも、よくクローバーと間違えられることが多いカタバミ(ハート形3葉)とほぼ同じところに群生している。葉は茹でて食用にすることもできるとのことで、囓ってみたが、なるほど湯がけばサラダに使える。この春、ゼミの植物観察で久しぶりにしげしげとクローバーを眺めた。昔懐かし。クローバーに毎日出会っていたのは10数年前のプリマス(英)のアイリッシュパブで、ギネスのグラスのてっぺんに必ず1葉描かれていた。この3つ葉のクローバー、アイルランドではシャムロックと呼ばれ、国の象徴として用いられている。ギネスを提供するアイリッシュパブでは,グラスに注いだギネスに泡でシャムロックを描くのが粋なバーテンの証となっている。もう代替わりしたが国立のアイリッシュパブ、現存の銀座のギネスパブでもシャムロックにはお目に掛かっている。スペインリーグに移籍した中村俊輔の所属したスコットランドのセルティックのエンブレムにもシャムロックが描かれていて疑問に思っていたが、シャムロックはケルト人の象徴で、アイルランド、スコットランド共々ケルトの国の象徴として奉っているとのこと。なるほど。
春の散策では、数本の4つ葉のクローバーを見つけた。少し調べてみたが、4つ葉のクローバーが遺伝的要因で発現するのか、環境的要因で発現するのかについて定かな説はなかった。4つ葉のクローバーが希にしか見つからないことが遺伝的要因だとすると、4つ葉を導出する遺伝子が劣性的に伝わることを示唆していると推察される。これは少し実験してみる価値がある。
正確な計数はしなかったが10cm四方、100-200葉の中に1葉存在する程度であったと、メモに残っている。0.5-1%の確率である。昨今のジャンボ宝くじの1等当選確率が0.00001%であるから、4つ葉のクローバーを見つけて幸運になる確率は遙かに高く、すぐに幸せが手に入る勘定となる。
7月に入り、再度現場を探索したが、意外にも頻度が減少していた。葉も大きくなり、茎も伸び、1m四方推定4-500本の中でようやく1本見つけた。0.2%。「幸運」矢のごとしである。3cm程だった背丈が10cm以上になっていた。これもまた、「一寸」の魂軽んずべからずであった。まこと人生と植樹会は奥が深い(閑話休題)。