「ブナ林の話 玉原ぶな林研修旅行」東京農工大学農学部教授 福嶋司
福嶋先生講話レジメ
日本の種と植生分布
日本の面積の92.5%は何らかの『緑』で覆われている。
自然植物群落 | 19.8% |
代償植生 | 27.1% |
植林地 | 25.0% |
耕作地 | 22.8% |
市街地など | 4.2% |
- 自然群落の代表であるブナ林は国土全体の3.9%( 145万ha )
- 自然植物群落は ’94年までの19年年間で23.2%から19.8%に低下
すなわち国土全体の3.4%( 102万ha )が消滅したことになる。 - そのうちブナ林の消滅は44万haで、東京都の2倍の面積に相当する。
- 植生に重要な湿原面積は、日本では国土の0.6%に過ぎない。 それも北海道に83.6%と偏在している。( 釧路湿原は21,440ha、尾瀬ヶ原750ha、日光戦場ヶ原400ha )
- 森林は、日本では国土の67.5%、フィンランド69%、イギリス9.9%、 韓国58.0%、中国13.6%
- 日本では天然林60%、人工林40%そのうち民有林が58.7%を占め、10ha以下の所有者が255万人
- 植物種は世界で維管束植物23万種。コケ植物2万余種で全生物の約6分の1。
- 日本には5,300種あり、そのうち1,800種が固有種であるが894種が絶滅の危機にある。無謀な開発行為や採取行為がその背景。
- ブナ林などの自然林は保護することが大切。再生が困難なため。
- 人工林(植林地、武蔵野の雑木林など)は手入れ管理が大切。
- 湿原には干渉に対して極めて弱い植物群落が多く、湿原を保護してゆくことが大変重要。再生も非常に困難
ブナとブナ林
- 北半球には12種類のブナがある。北米/メキシコ/ヨーロッパ/黒海/中国/韓国/台湾/日本等である。
- 日本には2種類のブナがある。太平洋側山地のみに分布するのがイヌブナである。ブナは九州から北海道まで分布。平均気温、年間降水量に影響される。
- 世界の植生を比較する場合の基準となる重要な植生帯である。
- ブナの本場である東北地方で、58~77年に全体の20%が伐採された。
- 伐採しても再生される森林と保護されなければならない森林とは区別されるべきである。
- ブナの英語はBeech 木と同根の言葉
- ブナの寿命は日本では346年の記録がある。
- ブナは『森の母』である。一年間に 1ha 当たり1トンの枝葉を地上に還元する。
- 種子はハイカロリーで野生動物の栄養源。直径20cm(樹齢約50年)で種子をつける。隔年に結実、6~7年ごとに大豊作。多くの種子が散布されるが、菌害、虫害、動物による食害、日照不足などの成長阻害要因が多い。
- 玉原ではブナの再生、育成を実験しているが困難な仕事である。