「一橋国立キャンパスとオーストラリア国立大学キャンパスの比較」玉木 淳(法4年)

オーストラリア国立大学(略称:ANU)は連邦首都キャンベラに在る連邦政府直轄の国立総合大学です。オーストラリア中の有能な学生や留学生が集まり、活気に満ちています。医学部、工学部、法学部、商業・経済学部、文学・社会科学部、アジア太平洋学部が設置されており、多くの研究施設を有する敷地は広大で、学内には車道、道路標識、店舗が設置されているなど、さながら1つの都市のようです。実際学内には会員制トレーニングジム、中華・和食・イタリアンレストラン、郵便局、カフェ、コンビニ、酒場、銀行、生協、宅急便事業者、教職員用宿舎、大学警察などがあり、大学自体がひとつの巨大なコミュニティとなっていて、通常の生活を営む分には大学の中で済んでしまいます。

実際私が入寮していたUrsula Hallは食事付寄宿舎であり、寮費に三度の食事分が含まれていたため、友人と学外の酒場に行く以外には大学敷地内からあまり出る機会がありませんでした。(寮の中にも格安でお酒を販売するCanteenという店があり便利な反面、大学の中でひたすら勉強して息抜きに友人達とお酒を飲んでいたイメージが強いです…)

ANUのメインキャンパスはキャンベラの郊外、アクトンに位置し、そのほとんどを占有しています。1.45km2/350エーカーのキャンパスは低木林地、ブラックマウンテン丘、人工湖であるバーリーグリフィン湖に隣接しており完全な人工都市ではありますが自然環境は大変良く、勉強環境としては最適です。

学生は7つの学内寄宿舎(カレッジ)に居住し、同じ釜の飯を食べる共同生活を送りつつ勉学に励みます。現在学生が居住しているのはBruce Hall, Ursula Hall, Burgmann Hall, Burton & Garran Hall, Toad Hall, Fenner Hall, John X3 College でありFenner Hall以外はすべて大学メインキャンパスに設置されています。60年の伝統を誇る寄宿舎間のスポーツ対抗戦(持久走・ラグビー)などでは全寮生が応援に駆けつけ、出身に関係なく寮生同士の結びつきを強固な物にします。私も60kmチーム持久走に参加し、現地学生と練習に汗を流し、彼らと深い絆を作れたのは良い思い出です。しかしANUは総合大学なので学生数がものすごく多く、自分の所属する寮生や部活動での友人以外知り合いがほとんどできないのが難点であると思います。

国立キャンパスとの違いは主要施設がすべて一箇所に集中している点です。国立キャンパスは東京国立市の真ん中に位置し、施設の拡充が大変難しいですし、小平キャンパスにも部活動拠点や寮などの学内施設があり機能が分散しています。ANUはキャンベラという完全人工都市の計画段階から学内敷地が余裕を持って配分され、現在でも施設拡充を進めています。しかし国立キャンパスの良い点は大学の規模が小さく、学生が少数という事もあり、外観はとてもきれいな上アカデミックな雰囲気がしっかりと根付いている点であると思います。特にANUでは西キャンパス本館や兼松講堂など歴史と伝統を感じさせる施設が全く存在せず、人工的で味気ない建物が多い気がします。特にキャンベラは街自身が人工都市であるため街の伝統や生活感があまり感じられず、国立のように自然と都市が共存しているような落ち着いた環境ではありませんでした。また学生の数が少ないためか、一橋生の方が大学への愛校心が強く、連帯意識と大学への愛着が人一倍強いと実感しています。私自身も一橋以外の大学で学べた事は新鮮な経験でしたが、やはり国立のキャンパス、そして一橋で学べる事の有難さを噛み締めています。