「春の山菜いろいろ」一橋植樹会 顧問 田中政彦

子供の頃、畑と雑木林に松・杉林、谷津田が入り組んだ房総台地で、春は山菜採りやタケノコ掘り、秋はキノコ狩りやヤマイモ掘りなどを楽しみました。なつかしい思い出です。
採ってきた収穫物はおふくろが料理してくれました。いまでは、山菜は食品スーパーや八百屋さんで買い求めます。

国立キャンパスには約500種の植生があります。学生会員の中野晶子さんと辰巳智之君が3年前に丹念に調査し「植生リスト」にまとめてくれました。貴重な資料です。セリ以外はリストに載っていますので、散策や作業のさい、探してみてください。(一橋植樹会2006年4月刊の小冊子第3号6~9ページ参照。)
子供のころの山菜採りは、毎年春のお彼岸のお墓参りの遠足のときから始まりました。

1 セリ(芹)
谷津田の源流の泉や掘りぬき井戸の地下水は暖かく、大振りできれいなセ
リが育ち、それを摘むことができました。
醤油でさっと煮ると、しゃきしゃきした食感と香りで食事が進みます。店頭では栽培品が並んでいますが、新鮮なものは十分美味。
2 ノビル(野蒜)
農道の脇道などに群生。球根も一緒に掘りあげてゆでてたべる。酢味噌で
和えるのが常道だが、私は、なぜかウスターソースで食べました。
3 ツクシ(土筆)
スギナの花。頭とはかまを取り除いた茎の部分をゆでて食べます。しゃきしゃきして美味しい。卵とじにすると格別だそうです。山菜料理にでてきますが、我が家では食べる習慣がなく、摘んだことはありません。
4 ヨモギ(蓬)
香りの良い若芽をゆでて刻み、餅につきこんで草餅にします。ゆでた若芽は冷凍保存できる。今の季節、和菓子屋さんに、桜餅と草餅がパックで並んでおり、つい買ってしまいます。
料理としては、若芽をそのまま天ぷらにすると絶品です。
5 フキ(蕗、3月の蕗の薹と陽春の茎)
ふきのとう(蕾のころ)を摘んで、ゆでて酢味噌か胡麻和え。ほろにがく早春の香りが楽しめます。また、陽春のころの茎は醤油で煮しめて佃煮にする。山椒の木の芽を一緒に炊くと、えもいわれぬ味でご飯のおかずになります。ふきのとうも茎も栽培品が店頭で売っています。
6 タケノコ(筍)
食材の王者。3月の竹林、南斜面の陽だまりに顔をのぞかせた小さな竹の子(掘りたて)はまさに美味。孟宗竹は4月が旬。5月6月とマダケやハチクも美味しい。国立キャンパスのタケノコは、残念ながら誰かにあっというまに掘られてしまいます。4月のボランティア作業のさい、タケノコ狩りをしたいのですがむずかしいでしょうね。
7 タラノキ(タラの木 ※木辺に葱ねぎの草かんむりをはずした字)
摘んだばかりの若芽をゆでて食べると甘くて美味しい。生の食材としても、
てんぷらでも食品スーパーで売っています。この木は樹勢がつよく群生し、若芽をかきとってもまた芽がでてきますが、3度目の芽を摘むと枯れてしまいます。
8 ワラビ(蕨)
採りたてをあく抜きして、タケノコと一緒に味噌汁の具にすると独特の風味で美味しい。山菜そばの具でもおなじみ。
下草をきれいに刈り込んだ雑木林などに群生していたものですが、最近はついぞ見かけません。5月上旬、ゴルフ場でプレー中、OBボールを捜しに藪に入ると握りこぶし状の若芽に出会ったりして懐かしい。
店頭で外国産のあく抜きした加工品を売っているが美味しくない。
9 ゼンマイ(薇)
山菜そばの具やナムルでおなじみ。我が家では摘んで食べる習慣はありませんでした。
10 ミョウガ(茗荷)
5月の新芽をかきとって、酢味噌で和えると、さっぱりして美味です。
ミョウガの花はいろいろな使い方がありますが、和食のアクセントの定番。コーンビーフと一緒に炒めると美味しいです。最近では栽培品が一年中売られています。
11 サンショウ(山椒)
新芽は冷奴に欠かせません。フキやタケノコとあわせて煮てもいい。
青い実は昆布の佃煮に、秋の堅い実は炒ってから粉にして七味唐辛子に使います。幹は、堅くて香りがあるのですりこぎにして使うそうです。
キャンパスの藪で小さな実生の木を見かけることがあります。
身近なものを、季節に合わせて取り上げてみました。
ほかにも、アザミ・イタドリ(スカンポ)・オオバコ・クコ・タンポポ・ナズナ(ペンペングサ)などキャンパスでもよく見かける山野草で食べられるものがかなりありますが食べたことはありません。

如水会報3月号によると、本学のキャッチフレーズに「Captains of Industry ~ 知と業(わざ)のフロンティア」が最優秀賞に選ばれたそうです。
植樹会の仕事は、自然科学や地球温暖化の問題などを、知と技(わざ)の融合で取りくむヒントを与えてくれます。
国立キャンパスの食べられる山野草を探して、心豊かに学習するのも楽しいではありませんか。

以上